第33回全国大会活動報告と運動方針(案)
治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟中央本部
二〇〇七年九月十二日~十三日東京・全労連会館
二、前大会以後の同盟活動と第33回全国大会の運動方針
1、治安維持法犠牲者に謝罪と賠償を要求する活動
(1)治安維持法犠牲者の調査・発掘をし名簿の作成へ
わが同盟は国に対し、治安維持法犠牲者の実態を調査し、その内容を公開することを国に求めてきました。しかし、国による調査、発表はいまだ進められておらず、私的な調査、研究、発掘が自主的に発表されるにとどまっています。同盟は、今日まで各地で調査・発掘されてきた治安維持法の犠牲者の名簿をいっそう充実させ、全国的名簿の作成に取り組みます。
(2)国会請願五〇万署名の達成へ
「治安維持法犠牲者国家賠償法」の立法化は、国会請願署名、地方議会意見書採択、国会の紹介議員の数に示される圧倒的な国民世論の結集が不可欠です。わが同盟は一九七四年以来、三十三回におよぶ国会請願を行い、今年までに累計六五〇万を超す署名を集め奮闘してきました。この署名運動は、同盟の活動の質的強化にも大きな役割を果たしてきました。また、戦後補償問題でたたかっている団体や人々への連帯、激励の力にもなってきました。さらに、憲法九条を守る運動で国民の過半数を獲得するためにも、同盟が掲げてきた「再び戦争と暗黒政治を許さない」ための署名運動は国民的世論づくりの推進力にもなっています。これは全会員の誇るべき成果です。同盟創立四〇周年を迎えるいま、その伝統と活動の教訓、実績を生かし、全都道府県本部が積極的な自主目標を掲げ、五〇万署名達成をめざして奮闘しましょう。
①有権者の過半数をめざす憲法改悪反対運動と結合して、国賠署名を推進します。〝右手に憲法署名を〟〝左手に国賠署名を〟を。
②同盟員の学習活動を重視し、「署名推進リーフ」を積極的に活用し、顕彰活動とも結合して署名活動に自覚的に取り組みましょう。。
③労組、民主団体、寺院、キリスト教会、自治会、サークルなど、より幅広い団体に、繰り返し協力を訴えましょう。
④県本部、支部は毎月、署名活動を点検し、先進的経験を普及するなど目標達成に向けて計画的、組織的な取り組みを強めましょう。
(3)国会請願の活動
今年国会請願行動には全国から昨年を上回る一四四人が参加し、三七三(五一・九%)人の衆参両院議員を訪問し、一〇九名が紹介議員を受けてくれました。翌日、三役・治安維持法犠牲者が長瀬法務大臣と面会しました。しかし全議員の訪問、事前の準備や働きかけ、訪問後の対策などについて、今後の改善が必要です。
(4)地方議会への陳情・請願活動
「治安維持法犠牲者への謝罪と賠償」を求める意見書は、今日までに四〇都道府県の三五〇市区町村議会で採択または趣旨採択をかちとってきました。しかし、栃木、群馬、岩手、静岡、広島、愛媛の七府県で未採択、一六府県では一、二の議会での採択にとどまっています。また、市町村の新たな合併によって再確認が必要な議会も生まれています。「治安維持法犠牲者への謝罪と賠償」を求める意見書を政府に提出することは、地元住民と地方議会の意思表明であり、国政にも重要な影響を与え、要求実現に結びつくものです。秋田の教訓に学び、未採択議会の議長、担当委員会責任者との話し合い、委員会での意見陳述などあらゆる可能性を追求しつつ、ねばり強く、計画的に陳情・請願活動にとりくみましょう。
(5)国際活動
①一九九七年から九年間にわたり国連人権促進保護小委員会でのNGO代表発言や国連内ブリーフィング、ジャパンデーなどで、戦前・戦中の治安維持法下の人権侵害の実態とともに、反戦、平和、憲法九条擁護を世界に訴えてきました。二〇〇六年に新しく国連人権理事会が発足、二〇〇七年五月には拷問等禁止条約の「日本政府報告書に対するカウンターレポート」を国際人権活動日本委員会のとりまとめで作成しました。
②二〇〇六年十月〝韓国平和・連帯の旅〟を行い四〇人を超える参加で「韓国挺身隊問題対策協議会」「国家保安法廃止市民の集い」など交流しました。今年は十月に〝中国平和・連帯の旅〟を計画し、山西大学学生や「中国国際交流協会」と交流する予定です。
③二〇〇八年五月に行なわれる「九条世界会議」の実行委員会に参加し、その成功のために積極的に取り組みます。また、同年行われる自由権規約の「日本政府報告書に対するカウンターレポート」(政府報告批判)作成に参加し、審査時には友好団体とともに国連要請行動に参加します。
(6)「戦争犯罪及び人道に反する罪に対する時効不適用に関する条約」の批准と承認を求める運動戦後補償要求でたたかっている諸団体と連帯し批准運動を推進します。
2、治安維持法犠牲者を顕彰する活動
(1)「時代を撃て・多喜二」映画の上映は、全国一〇〇ヵ所を超え五万人以上に広がり、この映画を見て同盟への入会や署名活動への参加が全国各地で数多く生まれています。昨年九月に作成した「DVD]「ビデオ」も全国的に普及しましょう。また映画「日本国憲法」(ユンカーマン監督)、「日本の青空」(大澤豊監督)、山田洋次監督の「母べえ」などのすぐれた映画の上映、普及活動を成功させます。
(2)犠牲者の顕彰・記念集会の成功を
毎年、全国で行われている3・15、4・16大弾圧記念集会、多喜二祭、山宣祭、野呂栄太郎碑前祭、西田信春、市川正一、飯島喜美、伊藤千代子、相沢良、古川苞その他有名無名の郷土出身の犠牲者の顕彰活動を大いにすすめ記念集会、支部主催の墓参会や偲ぶつどいなどを成功させ、若い世代に語りつぎます。また、全国各地への歴史探訪、碑めぐりツアーなどをすすめます。
(3)治安維持法犠牲者名簿の作成、伝記、書籍などの普及
治安維持法犠牲者の名簿作成のための調査発掘の体制を整備し、書籍・パンフレットなどをつくり普及します。
(4)同盟内外での学習会の強化
地方本部、支部で開催されている『治安維持法と現代』『全国女性交流集会報告集』などをテキストにした学習会を成功させ、治安維持法問題シンポジウム、憲法学習会などを開催します。
(5)同盟の機関紙「不屈」や『治安維持法と現代』両紙誌の編集内容の充実にさらに努力し、普及します。
3、一万六千人をめざす会員拡大運動
第32回大会は、一万六千人をめざす同盟会員拡大の早期達成を全国に呼びかけました。
①大会後一五〇〇人を超える新しい会員を迎えましたが、死亡、脱会者は差引き純増で三三〇人増(七月一日現在)となりました。会員拡大で増勢を勝ちとっているのは二八府県で大阪(一二八人)、青森(九六人)、鳥取(八一人)、愛知(五一人)、岐阜(五〇人)、和歌山(三八人)、島根・高知(三五人)、長野(三三人)で三〇人以上を増やしています。また女性部の奮闘により青森で一三名、鳥取で一七名の女性会員を拡大しています。これらの組織では、いずれも会議を毎週、毎月、定期に開催し、署名に協力してくれた人々、「時代を撃て・多喜二」の上映運動、顕彰活動、学習活動に参加した人々、同盟活動でつながりのあった人々に、大胆に訴えて新会員を増やしています。
②七月二十七日の中央常任理事会では、参議院選挙後、九月十二日の全国大会まで、同盟にとって焦眉の急である「会員拡大」に総力をあげることを決定しました。とくに「会員拡大」にあたっては若ものの参加を重視してとりくみます。すべての都道府県本部が、今まで掲げてきた自主目標の達成をめざし、会員拡大に奮闘しましょう。新会員を迎えることで同盟内に活力をみなぎらせ、第33回全国大会を成功させ、中央・都道府県本部・支部の体制強化と役員・活動家の若返りをはかりましょう。引き続き、二年後の次期大会をめざし、会員拡大運動を発展させましょう。
③同盟活動を発展させるうえで、地域に密着して活動する支部の確立と活動強化は、決定的に重要です。市区町村ごとに、点在する同盟会員を支部に組織し、毎月定例の会議を開き、同盟の方針を具体化し、支部ニュースを発行するなど、地域で系統的に活動できる支部体制を確立するために力を入れましょう。
4、「平和のための戦争展」と8・15宣伝
全国各地で開催されている「平和のための戦争展」は、アメリカのイラク侵略反対、自衛隊のイラクからの撤兵、憲法九条守れ、基地反対などの要求を掲げて開催され、戦争を知らない若い世代に感銘をあたえています。同盟は、その参加団体の一翼をにない「戦争に反対した人々」のコーナーを設け、治安維持法に抗して闘った先達を顕彰する展示などもすすめ、「戦争展」を成功させましょう。8・15「終戦記念日」のいっせい宣伝行動を成功させましょう。
5、全国ブロック会議、全国女性交流集会の成功を
①全国九ブロックで成功を
昨年の全国ブロック会議では、東北ブロックでの七〇名参加など、地域に密着して活動をすすめてきた支部役員、活動家の参加が増え、情勢と同盟の現状をふまえた内容の濃い討議が交わされました。同盟は、「九条の会」発足以後全国各地で〝憲法九条守れ〟の運動の先頭に立ってきました。この間の活動の教訓と運動の到達を踏まえ、今日の情勢にふさわしく、侵略戦争と治安維持法弾圧の歴史を語りついでいく必要が強調され、郷土の犠牲者、先覚者の顕彰活動の重要性、五〇万署名達成の意義、焦眉の課題となっている同盟の会員拡大の必要性などが討議されました。これらの教訓のうえに立ち、県本部の活動家とともに地域支部の役員、活動家の参加を増やし、ブロック会議を成功させましょう。
②第18回全国女性交流集会の成功を
昨年は、二九都道府県から七五名が参加し、祖父江昭二氏の記念講演「近代日本文学と中国」が参加者に感銘をあたえました。治安維持法犠牲者の松崎濱子さん、水谷安子さん、市吉澄枝さん、犠牲者の遺族の内村千尋さんの戦前の体験や思いを語り感動をよびました。集会では、憲法を守り、女性の人権を守る闘いの先頭に立っている姿も交流され、若い親子の参加、女性会員を拡大しているところなどから発言され、女性部活動に対する確信が表明されました。今年は女性部未組織の県本部からの参加にも努力し、全都道府県からの参加をめざします。また、二年後に迎える二〇回目の交流集会までの展望と具体的なとりくみの検討を深め、二〇周年にふさわしい運動を発展させるため奮闘します。
6、旺盛な同盟活動を支える財政基盤の強化を
前大会以後、同盟活動の多面的発展のなかで、財政支出が増大し、〇四年度は大幅な赤字、〇五年度は辛うじて黒字となりました。各都道府県でも、財政困難に陥っている所もあります。これを克服するために、①一万六〇〇〇人会員拡大目標をやりとげ、財政力を強化します。
②会費一〇〇%納入をめざし、奮闘します。
③賛助会員を増やします。
④年末のカンパと「不屈」名刺広告を増やします。
⑤『治安維持法と現代』、各種報告集、単行本、その他出版物ビデオ(DVD)などの普及と代金の一〇〇%納入をめざします。
⑥県本部財政の健全化にとりくみます。中央は、賛助会費の上納廃止。「不屈」名刺広告・『治安維持法と現代』などの地方還元金を増やします。
7、民主団体との共闘をひろげよう
同盟は、治安維持法犠牲者への謝罪と賠償を要求し、「再び戦争と暗黒政治を許さない」立場から全国革新懇、安保破棄中央実行委員会、憲法改悪阻止各界連絡会議など平和・民主団体、戦後賠償要求諸組織との共闘をひき続き強めます。
8、情勢にこたえる同盟の強化のために
(1)統一地方選挙戦、参院選をたたかい、いよいよ憲法改悪とのたたかいのなかでの同盟の歴史的使命が問われています。この期待にこたえ、同盟を質量ともに強化し運動を発展させることはわが同盟に課せられた大きな任務です。同盟中央は、多くの会員や広範な支持者にこたえるにふさわしい体制を整え、首都圏はじめ全国での同盟強化、戦後補償運動、治安維持法犠牲者の調査、国際連帯活動、組織・財政活動を強化するとともに、とくに前大会以来、規約改正についての検討・討論は、今後全国的にも組織し、次期大会まで続行します。
(2)来年は同盟創立四〇周年に当たり、同盟運動の意義と役割の普及をめざし、実行委員会を作り記念行事を行ないます。
注・本方針案は参議院選挙戦中の作成のため、選挙後の情勢については大会当日に若干補強する予定です。
2007年8月15日発行 不屈 №398