同盟歌壇 碓田のぼる選
静岡県江川佐一
どなたかが瓦礫の中に捧げし花親と逢えなく花のみ光る
東京都若林義文
先駆者の代わりを支える同盟の人びと多く反戦に生く
兵庫県岸本守
部下の戦死六十年過ぎても忘られぬ将校の友瞭罪に生く
北海道棟徹夫
子も孫も無くて振り込め詐欺も無し日常(つね)の電話は集いのあれこれ
福井県元山章一郎
若狭路に春をつげたる水送り鵜の瀬の水は奈良二月堂へ
新潟県加茂川ハル子
新しき被爆者出しし原発事故六十五年経し非核の日本
新潟県柳川月
ひと月を経つつ返信無きを憂う東日本被災を見舞うはがきに
岐阜県和田昌三
家ありし辺りに船の横たわりただ立ち尽くす女子高生は
東京都鈴木すみ江
切断の日常雪は霏罪として生きめやもいまもろともにとのみ(3・11)
和歌山県中平喜祥
今もなお我れの勤めし国鉄の城東線は淀川を渡る
宮城県天野辰夫
三・一五、「赤旗」創刊、渡政の死われが生まれし昭和三年
〈選の後に〉作歌でのもつとも中心的な重要問題は、ある事象にぶつかって生まれた心の感動を、どう表現するか、ということです。そのためには、その感動を作者自身がよくつかむことです。
自分のことながらむずかしいことです。
不屈中央版 №.443 2011.5.15