時の焦点 ノーベル賞
二五〇件にものぼったことしのノーベル平和賞候補の中から選ばれたのは、なんとオバマ大統領。
世界の人がそうでしたが、一番驚いたのは当人だったようです。
流行語大賞ならともかく、世界的にもっとも権威があり、一億二千七百万円もの副賞がつくノーベル賞とは。「核兵器を使用したことのある唯一の核保有国として、米国は、行動する責任をもっています。」「だから今日、私は明日に信念とともに米国が核兵器のない平和で安全な世界を追求すると約束します。」
春のこのプラハ宣言と核廃絶に向けて決議した秋の国連安保理でのイニシアティブ、四分の一以下に大幅削減に同意した米ロ戦略核兵器制限交渉の進展。ことし一月就任以来のオバマ大統領の核政策と外交努力は、たしかに人類史上の課題への果敢な挑戦であり、一挙に世界の人々をはげまし未来への明るい展望を
もたらすものでありました。
しかしオバマ大統領を動かしたものは、非核平和の世界を求め、イラク、アフガンの戦争継続に批判的な国際世論。とりわけ核問題については、戦後六四年にわたり、世界唯一の被爆国として、被爆の実相を広めつつ展開してきた日本国民の原水爆禁止運動こそ、今日の国際世論の底流です。
本来ノーベル賞はすでに果たした業績への評価のはず。オバマへの授賞は異例の前倒しであり、公約実現への期待がこめられています。受賞と、これから重責を担うオバマ氏に拍手を送るとともに、何回となく候補にノミネートされてきている「日本被団協」や、半世紀以上にわたり内外の分裂策動に耐え、毎年広く世界大会を開催してきた「日本原水協」の歴史的國際的貢献を喚起したいと思います。ノーベル平和賞の歴史は百年を超えました。その選考過程には政治的偏向もありました。選考委員会の『百年史回顧録』で一九七四年の佐藤栄作への授賞は「疑問」と反省しています。(元)
2009年11月15日 不屈 №425 (毎月15日発行)