I LOVE 9条 このみちをゆこうよ
─澤地久枝講演会─
今、世界が世直しを必要としている
3月29日、堺市民会館で「九条の会」呼びかけ人澤地久枝さんの講演会が開催されました。講演の要旨をご紹介します。なお、小田実さんの「遺す言葉」については前(64)号、本(65)号裏面をご参照下さい。
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今の日本社会は壊れかけている。あってはならない生命の殺傷に痛みを感じないのはど うしたことか。この背景に今の日本の深刻な経済不況があるのだろう。「もう私は力が尽きた」と言ったら、ともかく最低限の生活ができる救い、つまり「文化的で健康な最低限の生活」が保障されねばならない。憲法に生存権があるのに、今やどんどん削られ、追いつめられて息切れしそうになっている。憲法9条を中心に世直しできないかと考えるのは、憲法の様々な条項が無視され、侵されていると心から感じるからだ。
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イージス艦「あたご」が漁船を沈めた。僚船が捜索している時に、防衛省中枢部は何とかもみ消そうとした。憲法が自衛隊を認めているか否かについて国民投票もやったことがないのに世界有数の軍隊になり、ハイテクをうたいながら漁船を見落とし、日本国民を殺してしまった。自衛隊は私たちにとってマイナスはあっても、プラスはない。防衛費は年々増えて、その跳ね返りとして医療費などの社会保障がどんどん削られている。
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日本の社会はいつの間にか、金をいっぱい取る人間が偉いという空気に変わった。不正な金を動かし、秘密情報を教えられ、買ってはいけないものを買う。この国の責任ある地位にいる人は金に換えて恥というものを失ってしまった。
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小田実さんは、戦後の日本のよかったことは「中流」の人たちを作り、軍需産業に依存せず平和産業で復興したことだと言った。これは日本だけでなく、世界にとってもいいことだ。軍需物資でなく、平和的なものを作ることで、ほどほどにみんなが豊かになれるということのお手本に日本がなれるいうことだ。
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戦争は何も解決しないことが分かっているのに、何故日本は逆コースどころか、戦前の歴史そのままの、もっとひどい方向に行こうしているのか。日本は私たち主権者で成り立っているのに、政治がこんなに間違った方へ行って、私たちの生活は破綻の渕まできている。足下まで崩壊が始まっているのに、手を施すどころか、もっと絞るという感じだ。税金は上がる、消費税も上げたい、物価も上がってきているなど、生活費はどんどん上がり、年金は先細りだ。
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日本は軍需産業の方に舵を切ろうとしている。日本はポツダム宣言で兵器を作ることを禁じられて戦後をスタートした。武器輸出三原則もある。しかし、産業界は作りたくて仕方がない。金の取りばぐれがなく、再生産できるのは戦争に使われるものだ。モデルチェンジはどんどん行なわれ、いらなくなったものは売ってはならない国に売って儲けている。
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私が9条を思うのは、憲法には法の下での平等とか、生存権とか、基本的人権とか大切なことがたくさんある。だけど、一番肝心な一点に絞るとすると、人間的な暮らしをするための大前提は戦争をしない、平和であることだ。その意味で憲法9条を一つの砦としなければ、私たちの生活はもうありえない。
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小田実さんが「遺す言葉」で最後に言ったのは「この国はもっと値打ちのある国だ。それを今壊そうとしている。だから今は憲法を守ることをやらねばならない」「小さな人間が動けば世の中は変わる。それ以外に道はない」。今、世界が世直しを必要としている。小田実さんの『終らない旅』を読んでほしい。彼は私たちに終わってはならない大事な旅のバトンを渡して死んでいったと思う。
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よりよい社会・地球を残そうとして、出来る努力をする、ちょっとした勇気を自分に課すということは美しいことだ。世界の未来のために、種を蒔く人になってほしい。
2008年4月10日 九条の会わかやま 65号