自衛隊の違憲・違法の
国民監視活動を糾弾する 本部副会長増本一彦
去る六月六日に日本共産党によって公表された陸上自衛隊情報保全隊による全国的規模にわたる国民監視活動の報告文書は、自衛隊という存在そのものが国民に敵対するものであることをあからさまに示しました。自衛隊は国民の平和と民主主義と暮らしを守る運動に参加する人々を『(監視)対象勢力』と呼んでいるのです。
この報告文書は、自衛隊のイラク派兵に反対する世論が国内外で盛り上がり、全国各地で無党派層を広く結集した市民集会とパレード(デモ)が行われた二〇〇三年十二月から翌年三月までの各地の市民運動と集会などを監視し記録したもので、多数の市民が実名で記載され、行進や集会の写真まで掲載されています。しかも、監視の対象は、イラク派兵に抗議するものにとどまらず消費税増税反対や社会保障改悪反対の市民運動にも向けられています。
こうした監視活動は、公表された文書にある期間だけでなく、日常的に行われていることは、文書の公表された後の防衛省の発言によっても明らかです。
治安維持法と同じ発想
このような自衛隊の市民・国民監視行動は、自衛隊法等の法的根拠もない権力乱用の違法行為であるばかりか、憲法が民主主義社会の最も重要な基本的人権として保障している言論・表現の自由と集会・結社の自由を蹂躙する憲法違反の行為であることは言うを待たないことです。
「消費税憲法変われば戦争税」「社会保障を削って、戦争準備」という声がイラク派兵以後の消費税増税反対運動や社会保障改悪反対運動に広がり、これらの運動の質と広がりを大きく変えてきたのでしたが、自衛隊はイラク派兵のみならず国民の暮らしと結びついた市民運動をも敵視し、監視し、スパイ活動の対象としていることを重視する必要があります。
それは、自衛隊の海外派兵反対運動と結びつくおそれのある運動であるならば、すべてを抑え込もうという、治安維持法時代の「国体の変革を目的とする結社のためにする行為」(目的遂行罪)ならばすべてを弾圧することと同じ発想に立っているからです。
「治安出動」の前ぶれ
すでに、有事法制と国民保護法制が存在し、自衛隊の海外派兵と戦争のもとでは、国民の戦争反対運動に対する自衛隊の『治安出動』もあり得るのですから、自衛隊情報保全隊の国民監視・スパイ活動は、自衛隊の『治安出動』のための準備行動であるとも言えるのです。
九条が改悪され、戦争をするための自衛隊の海外派兵が自由になるとき、軍事裁判所(軍法会議)が生まれ、公然たる憲兵制度が復活し、国民は警備公安警察と自衛隊(軍隊)の双方からの監視と取締りと弾圧を受ける危険にさらされることになります。
国民の闘いが高揚したとき、軍隊が弾圧に乗り出した歴史は自由民権運動や米騒動にありましたし、治安維持法犠牲者の中にも、憲兵と軍法会議による弾圧を受けた人々がいたのでした。そして、戦後の六〇年安保闘争のときにも、当時の岸信介内閣のもとで自衛隊の治安出動が検討されたのでした。
同盟が掲げる「再び戦争と暗黒政治を許さない」という基本要求は、今回の自衛隊による市民監視・情報収集活動の実態の一部が明らかになったことによっても、ますます切実で緊迫した国民要求であることを示しております。
私たちは、自衛隊のこのような違憲・違法な行動を断じて許さない世論を大きく広げるために、さらに奮闘しようではありませんか。
2007年7月15日発行 不屈 №397