治安維持法下で豪放に闘う
有田出身の労働者の闘い
楠山通著 『不屈のあしあと』 をよむ
この本はすごく面白い。
治安維持法の犠牲者の血のにじむ闘いの記録を、面白いなどと言ってはいけないかも知れない。が、想像を絶した治安維持法下のたたかいを豪放に語っている。そこが誠に頼もしく、小心な小生などそのど根性に驚嘆する。
著者は、1901(明治34)年和歌山県有田郡広川村(当時)の生まれ。
若くして鉄工労働などに従事しながら、19歳で友愛会を知り、一匹狼的な闘いを和歌山、大阪で経験しながら共産主義に接近、1929年28歳で日本共産党に入党する。
小林多喜二が『1928年3月28日』を書いた翌年である。治安維持法が猛威をふるっていた時代、共産党に飛び込んでいった著者の勇気に驚かされる。
その資質と思想の強固さにおいて正に闘う人だったのだろう。
逮捕され、裸にされむちうたれ、腹に焼け火箸で「ナムアミダブツ」と書かれたなどの拷問の模様も詳しい。それに耐えた著者の思想性と胆力のすごさは小生には表現の言葉をもたない。
裁判所では判事の甘言を拒否し,紹介された弁護士をも社民系であると言う理由できっぱりと断る。兄の善意の差し入れ弁当を涙で返却したり(深い理由がありました)、大阪府議会議員に獄中立候補したり、近くの房と「文通」したりと、ここでも攻勢に次ぐ攻勢だ。
そしてもう一つ感動的なのが闘う仲間達への心遣い。著者にも心が折れそうな時もあったが、それを支える仲間。そして仲間を支える著者。心温まり、涙するページに幾度も出会う。和歌山の人たちも大勢出てくる。年配の方なら記憶されている方々に出会うかもしれない。
著者は1946年日本共産党和歌山県委員会第1回県党会議で県委員長に選出されている。戦後史も書く予定だったらしいが、果たせずに1979年他界されている。
会員の皆さんにもぜひ読んでほしいと思う本だ。 ( Y.T.)
(この本は、治安維持法国賠同盟大阪府本部が1992年に発行。
和歌山県本部に50冊在庫があります。定価1500円ですが、300円以上のカンパで結構ですのでご注文ください)
不屈 和歌山県版 295号 2016.2.15