鼓動
「横断幕」きっかけに相互理解を深めよう
東アジア杯サッカー
複雑な思いが、消えません。
サッカーの東アジア・カップ男子の日韓戦。ハングルで書かれた大きな横断幕がスタンドに翻りました。
「歴史を忘れた民族に未来はない」
同時に、日本のサポーターの一部が、戦前の日本帝国主義の象徴である旭日旗を掲げたことも報じられています。
国際サッカー連盟(FIFA)は、応援時の政治的な主張を禁じており、これらは、問題となる行為であることは間違いありません。
スポーツはさまざまな国の人々が、人種や政治信条を超えて集い、競い合うなかで、互いに理解を深め合うことに大きな役割があります。そこに政治を持ち込み、対立をあおることは、その否定につながるからです。
同時に、今回の一件は、いまの日韓関係、政治の反映であることも事実です。
かつて日韓のサポーターの間で、友好的な関係を築いた時期がありました。W杯の日韓共催が決まって以降です。象徴的だったのは、1997年フランスW杯アジア最終予選の日韓戦。今回と同じチャムシルスタジアムに、英語の小さな横断幕が掲げられました。
「ともにフランスに行こう」
W杯の出場権をかけた試合で掲げられたこの横断幕。当時、日本サッカー協会会長の長沼健さん(故人)は、その驚きを語っていました。
「背中に電気が走った。共催が日韓の人々を結びつけた。これがスポーツのよさだと実感した」
しかし、その後、靖国参拝、竹島、慰安婦問題などで両国政府が対立的になり、日韓関係が冷え込みました。同時に、サポーター同士の関係もしぼんでいきました。今回の事件もそうした中で起きました。
救いだったのは日本の中心的なサポーターの一人が、こうツイッターでつぶやいていたことでした。
「今日、韓国側から政治的な旗が出た。なんでサッカー場でわざわざ出すんだろうと思ったら、俺たちの見えない二階席で旭日旗が日本側からも出たと試合後に知った。残念でしかない。…今度、韓国サポーターとも話し合わないとな」
政治の根本的な解決は、「政治の場」で図られるべきです。同時に、サポーターらが、スポーツを通じて互いに話し合い、知恵をつくし、理解を深め合う。これらがすすむきっかけになればと、願わずにはいられません。
(和泉民郎)
2013年07月30日,「赤旗」